板金加工の中でも、精密板金は形状が複雑な製品、高い精度が必要な製品を製作できる加工技術です。
すごく難しそう……
どうやってつくられているの?
かっこいい機械を使いこなしてそうだよね!
テクニカル三友でやっている加工を教えてあげるね
ダイナミックな機械もたくさん使っているから、見ごたえ十分!
各工程で使われている機械を、写真や動画とともに一挙ご紹介♪
この記事を読めば、明日にはあなたも「精密板金はかせ」の仲間入り間違いなしです!
精密板金加工の工程
加工の依頼を受けると、次のような工程で製品をつくっていくよ
大きくわけてなんと7つもの工程があるんだ
設計・提案
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展開
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抜き加工
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曲げ加工
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溶接加工
↓
仕上げ加工
↓
検査
工程ごとに使用する機械もさまざま。
機械のくわしい説明もあわせて、ひとつずつ見ていきましょう。
設計・提案
加工の依頼を受けるとまず、お客様からいただいた図面をもとにCADで「設計」をするよ
図面を忠実に再現するのを心がけながらも、品質が高い製品をつくるために提案もします。
また、生産現場に負担なく、効率よく製造するために、加工方法や加工の順番を考えます。
設計ってちょっと興味ある!
展開
設計図面は、完成形の寸法や仕様が指示されたものです。
平らな金属板から板金加工によって製品に仕上げるには「展開図」が必要なんだ
お客様のご要望を満たしつつ、次の2点に注意して展開します。
- 必要な強度を出すには、どのような加工をすればよいか
- 材料の破棄をなるべく少なくするには、どのように展開すればよいか
ポイントは、加工がしやすいように展開することだよ
「設計」「展開」の工程で活躍するCAD(キャド)
CAD(キャド)はComputer Aided Designの頭文字をとった略語で「コンピュータ支援設計ソフト」と呼ばれます。
工業製品の製造や建物の建築、道路建設などを行うときには、設計や製図をします。
CADは、かつて手描きで行っていた設計や製図を、パソコン上で行うためのソフト
身のまわりの工業製品は、CADで書かれた図面をもとにつくられているんだよ
CADには大きく分類すると2種類あります。
- 2D CAD(2次元CAD)…平面図を作成する
- 3D CAD(3次元CAD)…2次元の図面からコンピュータ上で立体(3次元)モデルを作成する
2D CADは、平らな面に製図をします。
工業製品の最終形は立体ですから、2D CADから製品をつくる場合は、前から見た図(正面図)、上から見た図(平面図)、横から見た図(側面図)、の三面図をそれぞれ用意します。
平面図から立体像をイメージして製作するには、経験やノウハウが必要なんだ
数学の図形の勉強みたい
そんなあなたには3D CADという強い味方がいる!
3D CADは、仮想の立体空間で製図をします。
最初から立体像をつくりながら製図ができるので、だれが見ても完成形をイメージしやすいのが特長です。
パーツがいくつもある複雑な形の製品も設計できるよ
工作機械を動かすプログラムを作成するCAM(キャム)
CAMとは、Computer Aided Manufacturingの頭文字をとった略語で「コンピュータ支援製造ソフト」と呼ばれます。
パソコン上で工作機械の加工プログラムを作成するソフトです。
加工プログラムは人が機械に直接入力することもできますが、加工方法や製品の形によっては多くの時間がかかります。
CAMを使うと、CADで作った展開図に加工条件を指定するだけで、機械を動かすための加工プログラムに変換してくれるんだ
そのデータを機械に転送すれば、加工ができるというすぐれもの!
作業者のハンドル操作で行っていた加工は、CAMでつくったプログラムに沿って機械に指令を出すことで、自動化されました。
現在ものづくりの現場では、CADとCAMの機能をまとめたCAD / CAMシステムが主流で、テクニカル三友で使用しているのもこのシステムです。
設計から工作機械に指令するためのプログラムづくりまでを同じシステム内で行うことができます。
抜き加工
展開図に描かれた通りに輪郭を切ったり、穴を開けたりする工程です。
抜き加工で使用する工作機械4種
テクニカル三友には、抜き加工で使われる工作機械が4種類あります。
- シャーリング加工機
- タレットパンチプレス加工機
- レーザー加工機
- パンチレーザー複合加工機
ひとつの工程で4種類もの機械を使い分けているんだね
シャーリング加工機
シャーリングとは、定尺の金属板(=定尺板)を必要な大きさに切断する加工です。
定尺板とは?
一定の寸法になっている部材。
金属の定尺板では1219mm×2438mmの板が4×8(シハチ)と呼ばれ、最も流通している。
ハサミで紙を切るように、金属板を上の刃と下の刃で切断するよ
タレットパンチプレス加工機
金型に材料をはさみ、圧力をかけて打ち抜く加工をするので「プレス機」に分類されるタレットパンチプレス。
舌をかみそうな名前!
名前は言いにくいけど、仕組みは紙に穴を開ける「パンチ」と同じ
「ひげだん」みたいな略称があって「タレパン」と言うよ
「パンチ」とは「金型」のことで「タレット」と呼ばれる「金型ホルダー」に作業者がパンチを装着します。
機械がパンチを自動で交換しながら、金属板に抜き打ちや穴あけの加工をします。
丸型や角型など、さまざまな形をした汎用(はんよう)金型を組み合わせて使うことで、さまざまな加工ができます。
レーザー加工機
レーザー加工機はレーザーカッターとも呼ばれ、レーザー光を照射して切断する機械です。
彫刻などの加工もできますが、テクニカル三友では金属板の「抜き」の工程で使用しています。
タレットパンチプレスとは異なり金型がいらないので、プログラムがあればすぐに加工できます。
細かい作業も短時間でできるんだ
パンチレーザー複合加工機
パンチレーザー複合加工機とは、タレットパンチプレス加工機とレーザー加工機で行っていた作業を、1台で担える工作機械です。
フュージョン!
加工の様子を動画はこちらの動画で見られるよ↓
パンチによる穴あけとレーザーによる外形や曲線部の切断の両方を一度に行えるため、作業工程の短縮につながります。
ただし、パンチのみで加工できるもの、レーザーのみで加工できるものに複合機を使うのは、かえって時間がかかります。
テクニカル三友には、タレットパンチプレス加工機、レーザー加工機、パンチレーザー複合加工機がすべてそろっており、それぞれの部品に合わせて「抜き」の工程を効率よく行えます。
曲げ加工
抜き加工で展開図どおりの外形になった平らな金属板を、折り曲げる工程です。
油圧プレスブレーキ
油圧プレスブレーキは、油にかける圧力でプレス部分を上下させます。
分類としては抜き加工で使用するタレットパンチプレス加工機と同じ「プレス機」です。
上下に往復するプレス部分と受け側にそれぞれ金型を取り付けて、圧力をかけて金属板を曲げます。
金型の種類と、上下動の圧力の強さによって、鋭角にも鈍角にもさまざまな角度に金属を曲げられます。
テクニカル三友には、大小合わせてなんと9台のプレスブレーキがあるよ
曲げる角度の調整がしやすいため、現在は油圧を使う機械が主流。
テクニカル三友で使っているのもすべて油圧式です。
曲げ加工を行う様子を見たい方は、こちらの動画をご覧ください。
溶接加工
曲げ加工をした金属板を組み立ててつなぎ合わせ、製品の形を作る工程です。
金属板の材質や厚み、つくる製品の形によって溶接機を使い分けます。
溶接加工で使用する溶接機5種
テクニカル三友では、溶接加工で使用する溶接機が5種類あります。
- TIG溶接機
- MIG溶接機
- 半自動溶接機
- スポット溶接機
- スタッド溶接機
TIG(ティグ)溶接機
TIG(ティグ)溶接は「アーク放電」という現象を利用した「アーク溶接」の一種です。
コンセントからプラグを抜くと火花(=スパーク)が出ますが、これが「アーク放電」。
強い光と高熱を発することで、金属を溶かすことができます。
溶接で使うアーク放電は約20,000℃にもなる!
TIG溶接はTungsten Inert Gasの頭文字をとった略称で、「タングステン・不活性ガス」溶接という意味です。
トーチの先端にある電極にタングステン(Tungsten)という溶接作業でもすり減らない金属を使い、シールドガスに不活性ガス(Inert Gas)を使用します。
トーチとは?
溶接機の先端器具。この器具を金属に当てて溶接作業をする。
シールドガスとは?
溶接中の金属の酸化を防ぐために大気をさえぎる役割を果たすガス。
不活性ガスとは?
化学的に安定していて、他の元素、または化合物と簡単には反応しないガス。
溶接作業では、溶ける部分の金属を補うために、つなぎ合わせる部材以外に溶接棒を使います。
TIG溶接では、溶接棒とトーチを手で持ちながら溶接していくから、難易度は高め
熟練の技が光る、クールな溶接だよ
加工の様子はこちらの動画で見てね↓
MIG(ミグ)溶接機
MIG(ミグ)溶接もTIG溶接と同じ「アーク溶接」の一種。
違いは、トーチの先端にある電極を溶かしながら溶接することです。
MIG溶接はMetal Inert Gasの頭文字をとった略称で、「金属・不活性ガス」溶接という意味です。
電極の金属(=Metal)は、針金状になって自動的にトーチの先から出てきます。
このワイヤー(針金)が、TIG溶接における溶接棒の役割をするのです。
溶接棒を手で持たなくていいんだね
棒は持たなくていいけど、溶接は技術者がする
だから「全」自動じゃなくて「半」自動溶接と呼ばれているんだ
テクニカル三友では、MIG溶接機をアルミの溶接に使用しています。
加工の様子が見たい方は、こちらの動画をご覧ください。
半自動溶接機
MIG溶接機と同じように、自動で出てくる電極を溶かしながら溶接します。
テクニカル三友にある半自動溶接機は、CO2溶接とMAG(マグ)溶接の両方ができる機械です。
CO2溶接とは?
シールドガスに炭酸ガスのみを使用する溶接。
MAG溶接とは?
MAGはMetal Active Gasの頭文字をとった略称で、「金属・活性ガス」という意味。
活性ガス(Active Gas)は化学反応しやすいガスのことで、溶接では炭酸ガスが使われる。
シールドガスに混合ガス(炭酸ガス+不活性ガス)を使用する溶接。
テクニカル三友では鉄の溶接に使用しています。
加工の様子はこちらの動画で見られます。
スポット溶接機
TIG・MIG・半自動溶接は、金属を溶かして接合する融接(ゆうせつ)と呼ばれる溶接技術です。
対してスポット溶接は、金属に圧力をかけ電気抵抗によるエネルギーでつなぎ合わせる圧接(あっせつ)です。
点(=スポット)でくっつけるから、スポット溶接と呼ばれているよ
溶接時間が短いので、初心者でも作業がしやすいんだ
わたしにもできるかな?
やってみたい♪
スタッド溶接機
スタッド溶接では、金属の平板に専用のボルトやナットを溶接します。
スタッド溶接の特徴は次の3つです。
- 溶接時間が短い
- 接合した部分の強度が高い
- 溶接のあとが残りにくい
難しい操作がないため、スポット溶接同様、初心者でも作業がしやすい溶接です。
仕上げ加工
溶接加工でつなぎ合わせた部分をなめらかにする工程です。
溶接をすると、どうしてもデコボコした部分ができる
ゆがんだ部分をたたいたり、溶接で焦げた部分を削って取り除いたりすると、製品の仕上がりがきれいになるよ
仕上げ加工で使用する研磨機や工具
テクニカル三友で使用する研磨機や工具は次の三つです。
- サンダー
- サンドペーパー(=紙やすり)を取り付けたパッド(=当てもの)を回転させて研磨する工具
- グラインダー
- 砥石(といし)を回転させて研磨する工具
- 精密やすり
- 目が非常に細かいやすり
- 金属のほか、プラスチックや木材の精密な加工でも使われる
グラインダーでの加工の様子は、こちらの動画でご覧ください。
検査
納品前に製品の状態を検査します。
- 仕上がり寸法は正しいか
- 部品のつけ忘れはないか
- 製品に傷や汚れはないか
- 数量は合っているか ……etc
厳しい目でチェック☆
検査に合格した製品がお客様に届けられます。
精密板金加工の各工程ではさまざまな工作機械が使い分けられていた!
この記事では、精密板金加工の工程と、テクニカル三友が各工程で使用している工作機械をご紹介しました。
工程と機械が一気に見られて、楽しかった~
設計・提案
CAD / CAMシステム
展開
CAD / CAMシステム
抜き加工
- シャーリング加工機
- タレットパンチプレス加工機
- レーザー加工機
- パンチレーザー複合加工機
曲げ加工
油圧プレスブレーキ
溶接加工
- TIG溶接機
- MIG溶接機
- 半自動溶接機
- スポット溶接機
- スタッド溶接機
仕上げ加工
- サンダー
- グラインダー
- 精密やすり
検査
自動化されて作業が早まった工程もあるけど、まだまだ人の技術力が必要な部分が多いんだ
職人技って感じでイケてる!
精密板金加工は、高い精度を必要とする複雑な部品づくりを行うだけに、技術者の技量は品質に大きく影響します。
部品作りのお困りごとは、熟練の技術者がそろったテクニカル三友までご用命ください。